コロナ禍のもと、塾生たちは今…(1)

今年年明けから、国内でも感染者が出始めたコロナウイルスの影響で、3月から全国の小中学校、高等学校、そして大学と立て続けに休校となりました。

そうした中、慶應義塾SFCでは、オンラインによる授業開始を宣言、メディアでも話題になりました。

今回は、まず、朝日新聞EduAに掲載されていた記事を、転用・紹介させていただきます。

尚、同サイトでは、この7月「慶應SFC30年――日本の大学をどう変えたか」と題して、SFC創立から現在に至るまでの経緯を紹介した記事が掲載されています。HPのURLは以下の通り。

https://www.asahi.com/edua/article/13495038?p=1

以下、引用記事です。

https://www.asahi.com/edua/article/13339850

オンライン授業で学びを止めるな –慶応SFCの「最高の授業」がスタート
 さっそく記者も聴講させてもらった

2020.04.30

中村 正史

 「(学生は)家にいろ」「教員はオンラインで最高の授業をする」という新入生・学生向けの強烈な学部長メッセージが話題になった慶応義塾大学湘南藤沢キャンパス(SFC)の授業が30日から始まった。どんな「最高の授業」が展開されるのか、聴講させてもらった。

オンラインで「若き血」を大合唱

「家にいろ。自分と大切な人の命を守れ。SFCの教員はオンラインで最高の授業をする。以上。」

脇田玲(あきら)環境情報学部長が4月6日にSFCのホームページに載せた「新入生・在学生のみなさんへのメッセージ」の全文だ。

脇田学部長はアーティストとして知られ、映像や彫刻、ライブ活動などを展開している。このメッセージに対して学外からは「高飛車」「偉そうに」などと批判も出たが、脇田氏を知る関係者や学内からは「かっこいい」「さすが」「SFCっぽい」と受け止められている。

SFC最初のオンライン授業になったのは、文部科学副大臣なども務めた鈴木寛・総合政策学部教授の「公共哲学」。学生1000人近くが受講する「日本初の1000人級・遠隔授業」(鈴木教授)だ。学生たちは自宅などでパソコンやスマホで受講した。

画面に鈴木教授が登場し、「突然のコロナでこういうスタートになったが、新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます。今日は新入生の歓迎を込めて、まずは楽しくやりたい」という言葉から授業は始まった。

スタッフの紹介の後、ビデオ会議ツールZoomのブレイクアウトセッション機能を使って、15人ずつのグループに分けようとしたが、うまくいかず、いきなりハプニングが発生。グループワークの予定を変更し、慶応らしく「義塾の目的」の説明へ移った。

「慶応SFCは今年で創設30年。こういう年にコロナが起きた。こういう時こそSFCの原点に帰って、新しいSFCづくりをやっていければ。1000人の授業にチャレンジし、新しい遠隔授業のモデルをつくっていきたい」と鈴木教授が熱く語った。

しばらくすると、休憩タイム。何をするかと思ったら、慶応の応援歌「若き血」の合唱だった。「肩を組んで」の言葉で、画面では教職員や学生が左右に揺れている。「オンラインで大合唱はギネスものですね」とスタッフの声。

ここからが講義の本番だ。「なぜ公共哲学を学ぶのか」が今日のテーマである。「これから社会全体で修羅場が頻発し、板挟みと想定外を生き延びなければいけない。そういう時代にビビらない知恵を学んでほしい」。

時節柄、テーマは「新型コロナと公共哲学」へ。「コロナを公共哲学的に見ると、どう見えるのか。不要不急とは何なのか、アメリカで爆発的に患者が増えたのはなぜか、病院のベッドが足りない時、誰を入院させ、誰を断るのか、さまざまなテーマがあります」

起きて3秒で授業に行ける

講義の間、学生からチャットで「オンライン、めっちゃ楽しい」「通学時間がなくていい」」「起きて3秒で授業に行ける」「若き血、感動する」などの書き込みが次々に現れた。「アメリカはこんなにやばかったのか」「姉が医療関係なので心配です」などの書き込みも。

別のアンケート機能を使って「医療関係や社会安定関連業種に挑戦すること」について「大いに悩む」「消極的」「積極的に挑戦したい」から学生に回答させると、リアルタイムで棒グラフに回答比率が表示されていった。

スタッフは「チャットがすごく有効なんだな」「アンケート機能が面白い」などと感想を漏らした。

授業を終えた鈴木教授はこう話した。

「ゼミで演習型のオンライン講義は慣れ親しんでいますが、1000人対象は初めて。100人なら楽勝ですが、1000人に知識を伝達し、一方で盛り上げていかないといけません。演習と違って、教員がずっと主導しながら、インタラクティブ(双方向)を入れないといけない。当初から、講義という形態をそのままネットに持ってきてはいけないと思っていました。オンライン授業は良くも悪くも『奥行き』がない。大教室だと一番前に座っている学生と一番後ろに座っている学生はどっちが熱心かわかり、一番後ろの学生とのインタラクティブは不可能ですが、オンラインだと取りこぼしが大教室より減ります。質問や学生からのコメントは大教室だとほとんどありませんが、オンラインは教員と学生との距離が縮まります。2回目、3回目はどんどん進化させていきたいです」

記事を書いた人
中村 正史 朝日新聞社 教育コーディネーター
長年にわたって教育・大学問題に携わり、1994年、偏差値と大学神話に代わる新たな大学評価を求めて「大学ランキング」を企画し創刊。2008~15年に編集長。「AERA with Kids」「医学部に入る」「ジュニアエラ」なども創刊した。朝日新聞出版取締役を経て、20年4月から現職。EduAアドバイザーも務める。




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